はじめに
Microsoftが開発したOneNoteは、数あるノートアプリと情報管理ツールの中でも際立つ存在だ。この記事では、OneNoteの多様な機能、利便性、そしてMicrosoftのエコシステムとのシームレスな統合が、なぜそれを「最強のナレッジツール」と呼ぶに相応しいのかを紹介していく。
OneNoteの基本機能
OneNoteは、テキスト、画像、手書きノート、オーディオファイルといった多様なコンテンツを一つの場所に整理できるデジタルノートブックだ。OneDriveを通じたクラウド同期が可能であるため、どのデバイスからでもアクセスできるのが大きな利点だ。
- 多様なメディアのサポート: テキストだけでなく、画像、動画、リンクを挿入でき、情報の整理に役立つ。
- 手書き入力のサポート: タブレットやスタイラスを使った手書きメモやドローイングが可能で、アイデアのスケッチやメモ取りに便利だ。
- 検索機能: ノート内のテキストだけでなく、画像内のテキストも検索できる。
- 共有とコラボレーション: チームでのプロジェクト管理や共同作業に最適だ。
マルチプラットフォーム対応
OneNoteはWindowsとMac/iOS用にそれぞれクライアントソフトを提供している。Window版とMac版で若干UIが異なる点は要注意だが、機能的には差はほとんどない。
残念ながらLinux版のクライアントはMS公式からは出ていないが、Webベースのクライアントソフトがいくつかリリースされているので、それを通じてLinuxからでもOneNoteを利用可能だ。
Microsoftエコシステムとの統合
OneNoteの真価は、Microsoft Office製品群との深い統合にある。
- Officeとのシームレスな連携: Word、Excel、PowerPointとの連携がスムーズで、ドキュメントを直接OneNoteに挿入できます。
- Outlookとの統合: 会議のアジェンダやメールをOneNoteに転送し、ノートを共有することができる。
- OneDriveとの同期: 自動的にクラウドにバックアップされるため、どのデバイスからでも最新の情報にアクセスできる。
OneNoteのユニークな機能
OneNoteは、他のノートアプリにはない独自の機能をいくつか持っている。
無限のキャンバス
ページのサイズに制限がなく、情報を再現なく保存できる。OneNoteでは巨大な画像やファイルをペーストすることができるが、どれだけ保存してもノートのロードにはそれほど時間がかからない。画像やファイルに関しては遅延読み込みが行われるようだ。容量の心配をすることなく、いくらでも情報をOneNoteに投げ込もう
タグとカスタマイズ
OneNoteには、情報を整理しやすくするためのカスタマイズ可能なタグ機能がある。
画像からの自動テキスト抽出
OneNoteでは貼り付けが画像に対して自動でテキスト抽出が行われる。ノートを検索する際は、画像内のテキストもその対象に含まれるし、画像を右クリックして「画像からテキストをコピー」を選択すると、抽出したテキストがクリップボードにコピーされる。このため、情報を保存する際には、テキストとして活用できないのではといった心配をせず、画像のままデータを保存しても良いのだ。
競合ツールとの比較
価格 | Markdown対応 | プラグイン対応 | 扱えるメディアの多さ | DB機能 | オフライン対応 | データ同期 | |
OneNote | ◎ (無料) | × | × | ◎ | △ | ◯ | ◎ |
Obsidian | ◎ (無料) | ◎ | ◎ | ◯ | ◯ | ◎ | ◯ |
Roam Research | △ (有料) | ◯ | × | ◯ | △ | × | ◎ |
Notion | △ (無料プランあり) | ◯ | × | ◯ | ◎ | × | ◎ |
各ナレッジツールとの比較表を作成した。わかりやすいように各項目で各ツールの強みを丸バツで示してある。
こうしてみると、やはり各ツールにそれぞれ得手・不得手があることが見えてくる。際立つのはObsidianの万能性だろう。それぞれのツールで唯一プラグイン機構を備えており、ユーザーが好きなだけ機能を拡張していくことが可能だ。
他のツールは一切機能を拡張できないのかというとそうでもなく、Webサービス系のツールではChrome拡張として様々な拡張アドオンが存在するため、それらを使えば多少は使い勝手を向上させることは可能だろう。
筆者はなぜOneNoteを選んだか
先ほどの表で見るとObisidianが最強のように思えるが、私は結局OneNoteを選択した。なぜか。
最大の理由は、私が入力したいデータ形式が動画、音声、Excelファイル、PDFなどと実に幅広く、それら全てのデータ形式の貼り付けに対応していたのがOneNoteだったからだ。
また、Markdownベースのツールの場合は、Wordのように上から下へとデータが続いていく。「紙」のように乱雑に好きな場所に情報をペタペタ配置することができない。OneNoteの場合はまさに紙のように扱えるので、その点私の好みと合致したといえよう(もっとも、Obsidianにも最近「Canvas」機能が搭載され「紙」のようにデータを扱うことができるようになった)。
また、この手のツールであって欲しくない最悪のパターンが、製品の開発終了だ。小資本の会社のプロダクトではそうしたことが時たま起こりうる。しかし、考えてもみてほしい。あのマイクロソフトが廃業したりなどするだろうか。また、大企業であってもGoogleなどの場合は、少しでも採算に乗らない製品やサービスはすぐに廃止したりしてしまうが、マイクロソフトは既存顧客のサポートや互換性の維持に非常に熱心に取り組む会社である。こうしたことからも、OneNoteは末長くサポートされ続けることが期待できる。
OneNoteに残るわずかな不満点
強力なナレッジツールであるOneNoteだが、不満点がないわけでもない。
一つは、Markdownに対応していないことだ。他のツールとの連携ではMarkdown形式を通じた方がやりやすいことがあるのだが、OneNoteからコピーまたはOneNoteへコピーしたときに、Markdown形式が再現・維持されないのは少々ストレスではある。
二つ目は、蓄積したナレッジデータのデータベースとしての再利用性だ。OneNoteではNoteがまさに「紙」であり、好きな場所にテキストでも図でもとにかくペタペタ貼っていくデータ形式であり、データの形式としては乱雑なものだ。そのため、データを吸い出しにくく、本質的に再利用が難しい。この点は、NotionやObisidianに軍牌が上がると言えるだろう。
最も、MicirosoftもNotionに対抗したLoopというサービスを展開しつつあるので、LoopでOneNoteの資産を再活用できる仕組みを整えてくれるのではないかと個人的には期待しているところである。
結論
OneNoteは、その豊富な機能性、柔軟性、そしてMicrosoftエコシステムとの統合により、個人の知識管理からチームでのプロジェクト管理まで、あらゆるニーズに応えることができる。無料で利用できる点も、このツールが多くのユーザーに選ばれる理由の一つだ。OneNoteを使いこなせば、情報の整理とアクセスが格段に向上し、生産性の向上に大きく貢献することだろう。
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